何故、今、生活習慣病CKDセンターが必要か?
~最近の末期慢性腎臓病(CKD)の疾病構造の変化が持つ意味~
CKDは生活習慣の中に潜む
何故、今、生活習慣病CKDセンターが必要か?答えは明確です。私は昭和48年に郷里の鳥取県と母校の鳥取大学に別れを告げ、東京女子医科大学の腎臓病総合医療センターに入局しました。以来、一貫して腎臓疾患の病態解明、より優れた治療法の開発を求めて、基礎研究、日常臨床に取り組んできました。そして、平成23年10月に65歳を迎えて、気がついたことは、慢性腎不全、すなわち慢性腎臓病(CKD;Chronic Kidney Disease)の疾病構造がこの十年間ですっかり変わってしまったという驚愕の事実です。すなわち、最近の慢性維持透析患者の原疾患の頻度は、原発性腎疾患は激減し、糖尿病性腎症、腎硬化症、高血圧腎症など、生活習慣病に端を発した腎臓病が増加しており、まさにCKDは生活習慣の中に潜むと言っても過言ではありません。
江戸川病院グループに生活習慣病CKDセンター開設
平成23年9月、東京女子医科大学に別れをつげ、同年11月に社会福祉法人仁生社江戸川病院に生活習慣病CKDセンターを開設しました。同時に医療法人靱生会メディカルプラザ篠駅西口にも生活習慣病CKDセンターの外来部門を開設しました。
CKD患者さんの著しい高年齢化
末期CKD患者の透析導入患者の導入時年齢をみても、男性66.4歳、女性69.1歳となり、最も多い年齢は男性70~75歳、女性75~80歳であり、CKD患者さんの高年齢層の激増傾向は著しいものがあります。
加齢が腎臓を悪くする
動脈硬化は足、心臓、脳だけではありません。腎臓も悪くするのです。しかも、これまで余り問題視されなかった微量の蛋白尿(アブミン尿)が動脈硬化症の始まりであり、この動脈硬化症は腎臓内の動脈硬化症の発症進展を表していることも明らかになってきています。動脈硬化症が加齢病とすれば、CKDは加齢病とも言え、腎臓病総合医療センターではなく、文字通り生活習慣病CKDセンターこそがわが国の国民、恐らく人類が求めてことへ
回答なのです。
CKDにならないための早期診断早期治療
CKDは早期診断早期治療が不可欠です。ところが、幸いにも、私がこの度、これまでお世話になった大学を離れるに及んで、最新の視点で生活習慣とCKDをとらえて、患者さんに還元するという絶好のチャンスを得ることができました。私の経験は、既に医学書院から出版した『慢性腎不全保存期(慢性腎臓病)のケア(第3版) ~寛解を目指して』にも述べていますし、同じく、医学書院より平成24年4月出版予定にて鋭意準備中の『慢性腎臓病(CKD)を早期に発見し、最適治療を実践するための診療ベストガイド』の中で更に詳細に述べています。これまで既に機会があるごとに多くの方々に伝えさせていただいてきました。自慢に聞こえるかもしれませんが、そのたびに(CKDを防ぐための私の話に)目から何枚も鱗が落ちたといわれてきました。是非、参考にして頂きたいと存じます。
聞く人の目から鱗を何枚も落とした私の経験
この度は、当ホームページ上にCKDを防ぐための私の経験の一部を公開させていただくことにいたしました。
私は平成10年の秋にそれまで慣れ親しんだ河田町の東京女子科医大学病院を離れ、荒川区西尾久の東京女子科医大学第二病院(現在の東医療センター)に教授として赴任しました。赴任当時、CKD患者さんは一人もいませんでした。専門医がいないために、CKD患者さんも寄りつかなかったかもしれません。透析療法を実施していなかったことが主な原因だろう思います。いずれにしてもそれから7年後には私単独が担当するCKD患者さんは新規の患者さんで647名になっていました。
そこで、この時点でこれらの患者さんに対する私の治療成績を虚心坦懐に率直に自己評価することにいたしました。
私が実践的に体系化した集学的多重標的療法の優れた臨床効果
図1は、その時の結果です。この図の中のRENAL臨床研究、INDT臨床研究はアンジオテンシン抑制薬が慢性腎臓病の進行抑制をもたらすことを膨大な数の患者さんを対象として証明した臨床研究報告です。これらと比較しても私の成績は透析療法に導入せざるを得なかった患者さんや血清クレアチン値が2倍になるほど腎機能が悪化した患者さんの数が割合はRENAL臨床研究の場合の4分の1以下、IDNT臨床研究の場合の3.5~4分の1以下にすぎません。
このように、私が実践的に体系化した集学的多重標的療法がいかに優れた臨床効果を発揮するかが分かります。そこで、佐中式集学的多重標的療法と呼ぶことに致しました。
観察対象になった糖尿病CKD患者全体に対する透析療法開始あるいは血清クレアチン値2倍上昇患者さんの割合(図1)
メディカルプラザ篠崎駅西口には集学的多重標的療法にかけた私の38.5年の歴史と経験のすべてが集結
ここに掲載するCKD患者さんに対する臨床成績は私がこれまでに様々な角度から研究したりして、実践的に体系化した集学的多重標的療法が優れているかを示すものです。今までは私が目標とする透析療法開始を皆無にすることに成功したわけではないので、医療従事者以外の方、すなわち患者さん達に自ら進んで話すことに抵抗を感じていました。そのため、専門的な学術雑誌や学会で述べる位にとどめていました(佐中 孜:保存期慢性腎不全の治療戦略.慢性腎不全Today. 3:4-6, 2003、Tsutomu Sanaka, et al: Effect of combined treatment of oral sorbent with protein-restricted diet on changes of reciprocal creatinine slope in patients with Chronic renal failure . Ameriucan Journal of kidney disease,41(3):35-37, 2003, Tsutomu Sanaka: Clinical impact of oral absorbent on progression of chronic kidney disease(CKD). Nephrology Frontier. 6(1) 78-81、2007.佐中 孜:慢性腎臓病の治療法. Circulation Up to date. 5(6)620-627, 2010)。しかし、今回は、敢えて述べることに致しました。
佐中式集学的多重標的療法の個別成績
ここでお示しします図2で明らかなように、慢性糸球体腎炎の患者さんの場合は、78名中、8名の患者さんにおいて血清クレアチン値が当初の2倍以上あるいは2.0mg/dl以上に上昇していました。血清クレアチン値が当初の2倍以上に上昇したというのは腎機能障害がそれまでの2倍の速さで悪化したということです。すなわち、佐中式のCKD治療を実施すると、初診患者さんの10分の9の70名は悪化を食い止めるか悪化にブレーキをかけることに成功したという意味になります。
慢性糸球体腎炎によるCKD患者さんに対する佐中式集学的多重標的療法の腎機能経過への効果(図2)
(参考文献;佐中 孜;腎疾患治療における経口吸着炭AST-120の臨床的意義.PTM.4(5)AUG. ,2006)
糖尿病CKDの患者さんも佐中式のCKD治療でCKDの進行速度は減速
糖尿病CKDの患者さんの成績は慢性糸球体腎炎に比べると、図3に示すように、少し悪くなります。糖尿病CKDの患者さん50名中、9名において血清クレアチン値が当初の2倍以上あるいは2.0mg/dl以上に上昇していました。すなわち、佐中式のCKD治療を実施すると、初診糖尿病CKDの患者さんの10分の8の42名は悪化の進行を減速させることに成功したという意味になります。
糖尿病によるCKD患者さんに対する佐中式集学的多重標的療法の腎機能経過への効果(図3)
糖尿病性腎症(50例)
(参考文献;佐中 孜;腎疾患治療における経口吸着炭AST-120の臨床的意義.PTM.4(5)AUG., 2006)
メディカルプラザ篠崎駅西口はプロ中のプロが集結
それ以外にもメディカルプラザ篠崎駅西口には通常の透析療法はもとより、フットケア、リウマチ治療などその道に一生をかけたプロ中のプロとも称される医療専門家の中の更なる専門家が集結しています。
メディカルプラザ篠崎駅西口で先端医療が受けられる
無論、私たちの思いは、先端的専門性を維持しながらも総合的統合的な視点で、心が通う診療を追求し、患者さんが持つ全ての願いを叶えたいということです。このため、社会福祉法人仁生社江戸川病院グループの一員として緊急時のバックアップ体制の完備、健康加齢の提供、様々な合併症の早期診断・予防・治療を目指した検査機器および治療機器の導入、電子カルテの導入による種々の生体データ、使用薬剤の時系列的把握、施設環境におけるアメニティーへの配慮、超高齢化時代に対応したICT機器の導入、透析室においては透析液の超清浄化、完全自動化透析監視装置の導入などを実現させています。
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